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貯金だけでは損?インフレで減るのは「残高」ではなく「買える力」

監修:独立系ファイナンシャルプランナー
 | 読了 約8分
貯金だけでは損?インフレで減るのは「残高」ではなく「買える力」のイメージ

この記事の結論

通帳の数字は変わらなくても、物価が上がれば買えるものは減っていきます。物価が年2.5%上がると、20年後の1,000万円は今の約610万円分の価値に。2026年秋の物価・金利の最新データと日米の家計の比較から、「未来の購買力」を守るお金の分け方を解説します。

貯金があれば、将来も安心? その「安全」は、何を守っていますか。

「とりあえず貯金しておけば安心」。多くの人がそう考えています。でも、ここで一度立ち止まって考えてみてください。あなたが守りたいのは、次のうちどれでしょうか。

「安全」とは、何を守ること?
  1. 1

    残高を守る

    通帳の数字が減らないこと

  2. 2

    生活を守る

    今と同じ暮らしを続けられること

  3. 3

    家族の未来を守る

    子どもの教育や老後に、必要なお金を用意できること

多くの人が本当に守りたいのは、2つ目と3つ目のはずです。ところが、残高を守ることと、生活を守ることは、イコールではありません。その理由が「インフレ」です。

インフレとは「お金の価値が下がること」

インフレ(インフレーション)とは、モノやサービスの値段が全体的に上がっていくことです。言いかえると、同じ1万円で買えるものが少しずつ減っていくということでもあります。

たとえば、去年500円だったランチが今年は550円になったとします。財布の中の1万円はそのままでも、食べられるランチの数は20回から18回に減っています。これが「お金の価値が下がる」という意味です。

この「お金で買える量」のことを購買力といいます。インフレの時代に本当に注意すべきなのは、残高ではなく、この購買力です。

2026年秋、日本で起きていること

「インフレの話は、まだ先のこと」と思うかもしれません。でも、物価と金利の動きは、すでに私たちの家計に届いています。

物価と預金金利の最新状況(2026年10月時点)
項目数字ポイント
消費者物価(2026年9月)前年比+2.1%生鮮食品を除く総合。外食は+15.5%
日銀の政策金利(2026年9月〜)1.25%程度約31年ぶりの高い水準
メガバンクの普通預金金利(11月2日〜)年0.5%0.4%から引き上げ(税引前)

預金の金利が上がったのは、うれしいニュースです。ただ、利息には約20%の税金がかかるため、年0.5%の金利でも、手元に残るのは実質約0.4%。これに対して、物価は年2.1%上がっています。

知らないと損するポイント

普通預金の利息(税引後 約0.4%)−物価上昇(2.1%)= 約−1.7%。金利が上がっても、預金だけでは「買える力」は1年で約1.7%ずつ減っている計算です。

物価が年2.5%上がると、20年後はどうなる?

ここからは、物価が毎年2.5%ずつ上がると仮定して計算してみます。将来の予測ではなく、仕組みを理解するための試算です。

500円のランチは、20年後どうなる?

今日

500円

いつものランチ

20年後

約820円

同じランチの値段

※物価が年2.5%ずつ上昇した場合の試算

ランチだけではありません。暮らし全体でも同じことが起こります。

年間500万円の生活費は?

現在

500万円

住まい・食費・光熱費・車など

20年後

約820万円

今と同じ暮らしに必要な金額

※物価が年2.5%ずつ上昇した場合の試算

物価が上がり続けると、同じ暮らしに必要なお金は何倍になる?
物価上昇率5年後10年後20年後30年後
年2.0%1.10倍1.22倍1.49倍1.81倍
年2.5%1.13倍1.28倍1.64倍2.10倍

年2.5%が30年続くと、物価は約2.1倍。今30代の人が60代になるころには、今と同じ暮らしに2倍のお金が必要になるかもしれない、ということです。そして大事なのは、生活費が上がっても、収入が同じように増えるとは限らないという点です。支出と収入は、別々に考える必要があります。

見えない資産の目減り|田中さんの1,000万円

ここで、ある家庭の例を見てみましょう(架空の事例です)。

40歳の田中さんは、将来のために預金で1,000万円を貯めました。「これだけあれば、老後も安心」。このお金をそのまま20年間、預金に置いておいたらどうなるでしょうか。

利息や税金を考えなければ、60歳になっても残高は1,000万円のまま。残高は変わりません。でも、物価が年2.5%ずつ上がっていたとすると、次のようになります。

20年後の1,000万円が持つ「買える力」

40歳のとき

1,000万円

今の暮らしで使える金額

60歳のとき

約610万円

残高1,000万円の、今の物価での価値

※物価上昇率 年2.5%、預金利息0%の仮定

1,000万円の購買力(今の物価に直した価値)の推移
今の物価に直した価値
今1,000万円
5年後884万円
10年後781万円
15年後690万円
20年後610万円

通帳の数字は1,000万円のまま。でも、買えるものは約4割も減っています。

ポイント

減っているのは、金額ではなく「買える力」。預金には、金額のリスクはなくても、購買力のリスクがあります。

日本とアメリカ、お金の「置き場所」の違い

では、ほかの国の家計はどうしているのでしょうか。日本銀行の統計で、日本とアメリカの家計の金融資産の内訳を比べてみると、大きな違いがあります。

家計の金融資産の内訳(2026年3月末)
現金・預金株式等保険・年金等投資信託・その他
日本47.216.724.547.2%
アメリカ43.425.720.210.7%
  • 日本:金融資産の約半分(47.2%)が現金・預金。株式等は16.7%
  • アメリカ:現金・預金は約1割(10.7%)。株式等が43.4%と、市場の成長を資産形成に取り込んでいる
  • 共通点:保険・年金等の割合は、日本24.5%、アメリカ25.7%とほぼ同じ

差があるのは、資産の置き場所です。ただし、「アメリカのように株を増やせばいい」という話ではありません。アメリカの家計は、株価が下がれば資産も大きく減ります。大切なのは、この数字の違いが「選択肢がある」ことを教えてくれている、という点です。

FPの相談現場から

ご相談で「預金が一番安全だと思っていた」という声はとても多く聞きます。実際、預金は元本が減らない大切な資産です。ただ、10年・20年先に使うお金まで全部を預金に置いていると、気づかないうちに「買える力」が減っていきます。まずは自分の現預金の割合を知ることが、見直しのスタートです。

それでも、貯金は大切

ここまで読むと「預金は損なの?」と思うかもしれません。でも、預金は悪者ではありません。預金にしかできない役割があります。

預金が向いているお金
  1. 1

    すぐ使える

    毎月の生活費。必要なときに、すぐ引き出せる

  2. 2

    もしもに備える

    病気・失業・急な出費に備える生活防衛資金

  3. 3

    近い将来の支払い

    1〜数年以内に使う予定がある、決まったお金

大切なのは、預金か投資かの二択ではなく、お金に役割を与えて、分けて持つことです。

お金に「役割」を与える

お金は、全部が同じ目的ではありません。役割が違えば、置き場所も変わります。

使う時期で考える、お金の置き場所
役割使う時期例置き場所の考え方
使う今〜1年生活費預金。使いやすさを優先
守るいつ来るかわからない生活防衛資金(生活費の3〜6か月分)預金。すぐ引き出せることを優先
備える5年前後住宅購入・車・結婚など預金や保険でカバー。使う時期が近いほど値動きを避ける。入院や手術に備えて医療保険に加入
育てる10年以上先教育資金・老後資金長期・積立・分散で、購買力を守ることも検討

使うまでに10年以上あるお金なら、預金以外の選択肢もあります。そのときの基本は3つです。

資産形成の3つの考え方
  1. 1

    長期

    時間を味方につけて育てる

  2. 2

    積立

    一度に買わず、コツコツと続ける

  3. 3

    分散

    資産や地域を分けて、値動きをならす

知らないと損するポイント

投資には、値下がりや元本割れのリスクがあります。時間が長くても、利益が保証されるわけではありません。預金の「物価のリスク」と、投資の「価格変動のリスク」。両方を知ったうえで、目的に合わせて組み合わせることが大切です。

田中さんも、1,000万円を「今の生活」「万一の備え」「将来の準備」の3つに分けて考えるようになりました。一気に何かを買うのではなく、目的別に分けて考える。これが、インフレの時代の家計防衛の基本です。

今日やってほしいこと:自分の「現預金比率」を出す

最初の一歩は、たった1つ。自分のお金のうち、現金・預金がどれくらいの割合かを知ることです。

  1. 銀行の預金残高を確認する(すべての口座)
  2. 手元の現金を確認する
  3. 1と2を合わせた金額を出す
  4. 金融資産の合計(預金+株式・投資信託+保険の解約返戻金など)で割る

ポイント

現預金比率(%)= 現金・預金 ÷ 金融資産の合計 × 100

たとえば、金融資産が800万円で、そのうち預金が600万円なら、現預金比率は75%です。日本の平均(47.2%)より高いからダメ、低いから良い、ということではありません。その預金のうち、10年以上使わないお金がどれくらいあるかを考えるきっかけにしてみてください。

お金の全体像を把握する方法は、お金の現在地を知る|家計の見える化3ステップとマネーフォワード ME×AI活用術でくわしく解説しています。

守るべきは、残高だけでなく「未来の購買力」。

よくある質問

インフレのときは、貯金をやめたほうがいいですか?

いいえ。生活費や生活防衛資金としての貯金は、インフレでも欠かせません。大切なのは、貯金「だけ」に頼らず、使う時期に合わせてお金を分けておくことです。

預金金利が上がっているなら、預金だけで十分では?

2026年11月からメガバンクの普通預金金利は年0.5%になりますが、税引後は約0.4%。物価上昇率(2026年9月は2.1%)を下回っているため、実質的な購買力は減っている計算です。今後の金利と物価の動きを見ながら、お金の役割ごとに置き場所を考えましょう。

自分にどれくらいの備えが必要かわかりません

必要な金額は、収入・家族構成・これからのライフイベントによって人それぞれです。まずは現預金比率と、お金の現在地を知ることから始めましょう。

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